ブログ再開「学部マネジメントと学部長の役割」

はてながいつの間にかダイヤリーからブログに進化していました。遅まきながら新しいはてなブログを開設します。以前の職場で書いていたブログはそのまま残しておきます。 d.hatena.ne.jp 私自身も職場が変わって2年半が経ちました。あっというまの2年半で…

二つの課題解決力と当事者意識〜課題解決提案型授業は学生の課題解決力を育成するか

2015年7月15日の『教育学術新聞』に掲載された記事です。5ヶ月ほど前の記事ですが、少し加筆してブログに転載します。 - 課題解決策提案型授業は課題解決力を育成するか 課題解決力とは、産業界ニーズの高い汎用的技能(ジェネリックスキル)の一つとして、…

大学で育成すべき“ジェネリックスキル”とは何か?

ご無沙汰しています。ブログの更新がかなり止まってしまっていました。さて、岡山にある「つながる地域づくり研究所(http://www.tsunaken.net/)」というところが発行している地方自治体情報誌“つな研ナビ”の第35号(12月発行予定)に、「大学で育成すべき“…

大学の勉強は何の役に立つのか? その2

前回紹介した小説では、主人公の「私」は、パンフレットの制作を任された時に、自分の頭だけであれこれ考えるのではなく、「情報収集→情報分析→課題発見→構想→表現」といったプロセスをふまえ、質の高いアウトプットを出していました。こうしたプロセスをき…

大学の勉強は何の役に立つのか?

あちこちの大学でオープンキャンパスが開始される時期がやってきました。多くの大学では、「うちの大学で◯◯という分野を勉強すれば◯◯という仕事につける」と言うことが多いようです。たしかにそれは、医・薬・歯学部や教育・保育、理工系などには当てはまり…

いわゆる「社会人基礎力」に関するメモ

今回の記事は、私の仕事上考えていることを、忘れないうちにメモにしたものです。一気に書いたので読みにくいと思います。 すでに、専門家の間では散々議論されつくされていることだとは思うのですが、「私個人としては、社会人基礎力をこんな風に理解してい…

4つの小学校を経験して言えること

今日話題になった小学校の教育に関するブログ記事を読んで、自分の小学校のことを書きたくなりました。ほとんど自分語りですので、興味がない人はスルーしてください。僕は4つの小学校に通っています。 最初に入学した小学校は地方都市の真ん中にある創立10…

卒業生F君の披露宴の祝辞で、ゼミ教員は何を語るのか

大学4年間はその人の一生を左右するほど大きな影響をその人に与えます。 大学時代は、高校時代とくらべて、他者から強制されることは相対的に非常に少なくなります。それが「大学生は自由だ」という意味です。たとえ、縦社会の強い体育会系の部活動であって…

E君はいかにして大学に進学し、ジャージを脱いだか

全国に大学は780ほどあります。それらの大学にはそれぞれ建学の理念があり、それぞれの教育理念を持っています。主観的な思いとは別に、客観的なレベルでも各大学の位置づけというのはなんとなくあります。例えば、家庭環境が貧しくても学力が優秀な学生を選…

大学でbe動詞を教える授業のレベルは低いのか?

大学でbe動詞教える授業、文科省が改善要求 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) こういう大学の授業のレベルの問題は時々話題になります。僕自身、以前も、twitterでとある大学のシラバスの件で議論になり、「あのシラバスの意味するもの」というまとめ…

C君はいかにしてC大学の学生となり、退学問題を乗り越えたか②

C君は無事にC大学の入学式を迎えました。 入学式終了後、C大学では学部ごとにガイダンスがあります。 C君は法学部なので法学部の部屋に行きます。その場所で法学部長はこんな話をしました。 「大学を出た後、みなさんは社会に出ることになります。大学はここ…

C君はいかにしてC大学の学生となり、退学問題を乗り越えたか①

今回からBLOGOSにも転載されるようになったので、改めて自己紹介をします。 はじめまして、山本啓一と申します。北九州のとある大学に勤める大学教員です。2008年から2012年まで学部長をつとめ、その後も教育改革に携わり続けています。日本の大学は、ここ最…

とある自伝的小説より(フィクションです)〜「大学の勉強は仕事にどう役に立つのか」

退学者問題は、結局のところ、「大学の勉強は社会に出た時にどう役に立つのか」という問題と深く関わっています。目の前の学生に対して、説得力を持った説明を教員が組織的に行うことができれば、それだけで退学率は大幅に変わってくるはずです。退学者問題…

中退問題の前提

中退問題、思いがけない反響を頂いてびっくりしています。このA大学のAくんは完全なフィクションなのですが、どうも多くの人の心の琴線に触れる何かがあったみたいですね。今度はC大学のC君を登場させようと考えています。A君よりさらに勉強ができず、家庭状…

マージナル大学誕生の背景

今回は背景説明のみです。多くの人が知っていることですが、今一度振り返ってみます。前回、大学進学率が日本の経済構造の変動の中で高まっていったと述べましたが、他方で、大学も大幅に増えました。現在、大学数は782校もありますが、1990年は600校ぐらい…

大学退学率と就職率についてシミュレーションをしてみた

前回の記事で、退学問題を事例風に紹介しました。実は、前回紹介した表には続きがあります。 1学年あたりの定員が500名のA大学では、退学率が3.0%です。すると、4年生の段階では443名となり、卒業時には(少なく見積もって)留年が1割出るとして398名にな…

A大学のA君はなぜ大学を退学したのか

大学の退学者問題は、その延長線上に就職問題ともつながってくるわけですが、なかなか大学関係者以外には理解し難い問題かもしれません。なにせ、肝心の大学関係者で、退学者問題・就職問題をきちんと理解している人が少ないのが現状です。 そこで、かんたん…

大学の退学率の意味とは

大学中退:文科省が全国調査へ 年6万人以上、防止策検討(毎日新聞 2014年01月31日) というニュースが話題になっています。よく大学の就職率が話題になりますが、大学関係者にとっては、実は「退学率」こそが深刻な課題として受け止められていることが多い…

『教育学術新聞』11月13日(水)号「学部長向けの研修が必要 山本前学部長に聞く」より

『教育学術新聞』11月13日(水)号に掲載されました。「学部長向けの研修(FD)が必要」というタイトルで、「学部教育」全体をどのようにデザインするか、中間管理職たる学部長のスキルはいったいどうやって育成できるのか、という内容です。転載許可をいた…

芦田宏直『努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論 』のレビューを書きました

アマゾンのレビュー掲載まで時間がかかると思うので、まずはこちらに転載します。 プレッシャーを感じすぎて、とっちらかった内容になってしまいました(笑) 私にとっての「実用書」という感じの書評になりました。 - 「マージナル大学に対して遠くとも確固…

警察官採用試験の小論文は何を問うているのか?

公務員試験には必ず小論文があります。警察官試験も同様です。また、最近では、九州の中規模程度の企業でも小論文や作文が増えているようですから、文章能力をみるのは公務員だけとは限らなくなってきました。ともあれ、警察官の小論文とはなにか特殊な内容…

2年半年ぶりのブログ復活〜「警察官育成」のポイント

ここ2年ほどブログをほとんど更新せず、twitterに集中していました。 しかし、今年度より学部長も無事に退任できたので、今までやってきたことや考えてきたことを徐々にブログに書いていこうかと思います。そこで、このブログを復活させることにしました。…

警察官という職業とは何か?

学期中はほとんど記事が書けないくらい忙しい毎日でした。春休みに入って、ふとエアポケットのようにスケジュールが空くときがあります。そんな時に、久しぶりの記事を書こうと思います。さて、わが大学は、昔から警察官を多数輩しています。学生数も1学年60…

常見陽平さんに来ていただいた

久しぶりのブログです。さて、本日は、『くたばれ!就職氷河期』の常見陽平さんに講演に来ていただきました。常見さんは、twitterで阿部謹也先生の思い出を交換し合ったことがきっかけで、そこから講演にお呼びした次第。個人的にもお会いするのをとても楽し…

(私論)キャリア教育とはこんな意味で捉えられないか

今日は、高校の進路指導の先生方を招いての研究会が大学で開催された。とくに商業高校の先生の発表では、職業教育の点から見て、非常に参考になる取り組みを紹介され、大変面白かった。その後、先生方と懇親会。話をしているうちにキャリア教育がなんなのか…

阿部謹也ゼミの思い出

僕にとってゼミとは大学生活のすべてといってよいほどのものである。大学生活や大学の勉強を語る上で、自分が経験したゼミを抜きに議論することはできない。そこで、少しまとめて書いてみよう。この記事は大学2年のゼミの思い出だ。ゼミ旅行の記事でも書い…

新米教員、新入生研修を乗っ取る(その4)〜研修を導入するだけじゃダメだった

前回の記事の通り、法学部のフレッシャーズ・ミーテイングは、実施している教員と学生が誇りに思うほどの高度な内容へと進化していきました。毎年、少しずつレベルアップしていった結果、他の学部が真似しようと思っても、簡単に真似ることのできないレベル…

新米教員、新入生研修を乗っ取る(その3)〜新入生研修は導入したけれど。。

今回はさくっと短い記事です。 法学部でPAを最初に導入したのは2004年のフレッシャーズ・ミーティング(FM)でした。ちょうど「FMを担当してくれ」と当時の学部長に依頼されたことを幸い、僕がFMの中身を変更できるチャンスに恵まれたのです。ただし、PAロー…

番外編〜こんなPBL研修をやってみた

先日、大学からおよそ30kmくらい離れた宗像グローバルアリーナというところで、「オフキャンパスFD研修」と題して1泊2日の教職員研修をやってきました。オフキャンパス研修は今回で2回目。大学を離れ自然豊かな場所のなかで、ゆっくりと参加者全員でグル…

新米教員、新入生研修を乗っ取る(その2)〜こんな新入生研修があるのか!

みなさん、こんにちは。 2003年のことです。一橋大学国際企業戦略研究科(ICS)という、半分が留学生、授業はすべて英語というちょっと変わった大学院が面白い研修をやるから見にこいと誘われ、ちょうど夏休みということもあって、僕は八ヶ岳にまで、のこのこ…