新米教員、新入生研修を乗っ取る(その3)〜新入生研修は導入したけれど。。

今回はさくっと短い記事です。


法学部でPAを最初に導入したのは2004年のフレッシャーズ・ミーティング(FM)でした。ちょうど「FMを担当してくれ」と当時の学部長に依頼されたことを幸い、僕がFMの中身を変更できるチャンスに恵まれたのです。

ただし、PAロープコースがある施設はないし、ファシリテーターを呼ぶことも無理。であれば、FMに協力してくれる学生(協力学生)を鍛えて、彼らがアクティビティをファシリテートすればいい。そう考えて、学生たちと事前準備を進めることにしました。学生たちに「こういうことをやりたいんだ」と伝えて練習したり。でも、みんな最初は半信半疑。「これやって何になるの?」っていう感じでした。

ところで、こうした突飛なことを僕が法学部でするっと実現できた背景には、退学者問題がありました。当時の法学部の退学率は今の2倍以上。なんと1年間で法学部から100名以上の学生が退学していたのです。当時は、退学問題にどう取り組めばよいか、アイディアを誰も持っていませんでした。そんなところに「入学直後に入門演習で仲間づくりができたら、退学問題に歯止めがかけられるかもしれない」という提案を若手である僕が行なったのです。そりゃ、学部としては反対する理由はありません。ただ、以前からのFMの責任者の先生は、僕がやろうとすることに(当然ですが)強烈に反対していました。そういう反対意見を当時の学部長はあっさり封じ込め、僕の提案を強く支持してくれたのでした。あの時、学部長が僕を支持してくれなければどうなってたんだろうと思ったりします。

さて、FM当日、PAのアクティビティをいくつか導入し、新入生たちは次第に打ち解けた様子になっていました。この時の研修は、今から考えると本当に稚拙な内容でしたが、それでも思い出深いものがあります。

その後のFMでしばらくやった「全員トラストチェア」もこの時が最初です。全員でやってみたらどうなるだろう、と偶然思いついたのですよね。

ただし、この時の研修に対しては、新入生も教員も賛否両論でした。「面白くない」とか「意味ない」といった、僕の心が折れそうなコメントもいっぱいあったのでした。ただ、ある同僚が、アンケートを分析すると、FM全体の満足度とアクティビティの満足度が相関してるから、FMの満足度をさらに上げるためにはアクティビティの改善が鍵になる、と言ってくれたのです。

その後、法学部のFMは作成するパンフの中身、ファシリテーションのレベル、全体のプログラムの充実度などどれをとっても毎年着実に進化し続けていきました。特に協力学生のFMに対する愛着や熱意の入れようの深さはものすごいものがあります。毎年FMでの準備のためには協力学生たちは春休み、毎週のように集まっては練習を繰り返し、ファシリテーション・テクニックの習得に務めます。いつの間にか、「フレッシャーズ・ミーティングは自分たちでつくり上げるもの」になっていったのでした。

現在、FMがどの程度のレベルにあるかは、法学部のページをご覧いただくのが一番よいでしょう。

◯法学部フレッシャーズ・ミーティングについて

◯フレッシャーズ・ミーティングを支える裏方たち


このように着実にFMが改善されていく中、新入生や教員の評価は非常に高いものになっていきました。新入生からは「この研修があるおかげで友達ができた」「大学に安心して通うことができる」という声をたくさん聞きました。「この研修はとってもいい」と多くの人たちからも注目されてきました。国際関係学部もいつの間にか同じような研修をやるようになってきました。


ところが、肝心の退学率についていえば、それほど劇的に改善されませんでした。よくてせいぜい1%程度下がったくらいです。あれほどの研修をやってるのに、なぜ退学率が改善されないのか。僕には全くその理由がわかりませんでした。それが分かるのはもうしばらく時間がかかりました。2009年、昨年になってやっとだったのでした。

続きます。